「海の防衛に海保・海自を強化せよ」
『週刊新潮』’09年3月5日号
日本ルネッサンス 第352回
日本は、38万平方キロの領土面積を基準にすれば世界で61位だが、領海と排他的経済水域(EEZ)を足せば447万平方キロ、世界第6位の海洋大国だ。広大で豊かな海の存分な活用が、日本の未来の安全と繁栄に欠かせない。だが、その海を中国が猛烈に侵しつつある。
昨年12月8日、中国海洋調査船2隻が、尖閣諸島に3.5キロまで迫った。この明白な領海侵犯に対して、海上保安庁の巡視艇が即時退去を要求したが、中国船は9時間半も居据わった。同事件を機に、日本側はヘリコプター搭載の大型巡視艇を同海域に常駐させることを決定。その決定が報じられると、中国外務省の姜瑜報道官が直ちに反発した。
「釣魚島(尖閣諸島)とその付属島嶼は古来、中国固有の領土であり、中国はこれに争う余地のない主権を有している。同島の実効支配を強化する日本側のいかなる動きもすべて中国の領土主権を侵害するもので、不法かつ無効なものであり、直ちに中止すべきだ」
10日には、中国外務省が北京の日本大使館に「(日本側が)警備を強化すれば、中国側は強い関心を示すことになる」として、「厳正な交渉」を申し入れた。つまり、黙ってはいない、断固たる対応策をとると、伝えてきたのだ。
また、中国国家海洋局の孫志輝局長は2月16日、海洋局関連会議の席で、昨年12月の中国海洋調査船の尖閣諸島への接近と日本領海への侵入は、「実際の行動で中国の立場を示した」のであり、中国の主権を主張することが目的だったと報告した。同局長は2008年、中国が主権を主張する海域で展開した船は延べ200隻余り、航空機は140機余りに上った旨も報告した。
中国は自らを海洋大国と定義し、21世紀の中国の発展は海洋及び宇宙への進出によって担保されると考える。結果、日本のみならず、ベトナム、フィリピンなどアジア諸国への示威行動と実力行使で、他国の領海、領土を中国領へと、実効支配を以て変えてきた。それを可能にしたのが、多数の船と航空機の展開なのだ。
海保のオンボロ船
だが、日本こそ真の海洋大国だ。日本の安全と繁栄は確実な海の守りが大前提で、その最前線に立つのが海保と海上自衛隊である。だが双方ともに、強大化する中国の海軍力とは反対に、予算の減少に泣き、船も航空機も大いに不足している。たとえば、海保の巡視船・艇約350隻、航空機約70機の4割が耐用年数を超えて老朽化しているのだ。
巡視船「なとり」は32年前の船だ。上甲板が腐食し、無数の小さな穴が開いて破れそうに見える。船齢28年の巡視船「ひたち」はなんと燃料タンクの腐食が進み、目視出来るほどの穴がある。船齢33年の巡視船「まつうら」は主エンジンにつながる配管が腐食してボロボロだ。
これで、日本の海を侵犯する外国船の脅威に対処せよとは、現場の隊員が気の毒だ。それでなくても海保の船の能力不足が指摘されてきた。連想するのは1999年3月、北朝鮮の工作船2隻が能登半島沖に侵入したときのことだ。結論からいえば、あのとき、海保は対応出来なかった。海保は巡視艇15隻、航空機12機で追跡したが、工作船は速度を上げて逃走を続け、海保の船は追いつけず、追尾を諦めたのだ。代わって追尾したのは海自の艦艇だった。
それにしても海保の船はなぜ、こんなに老朽化しているのか。外国の海上保安機関と比較すると原因の一端が見えてくる。情報非公開の中国とロシアを除き、米国、韓国、台湾との比較を見てみる。
まず、予算である。海保の予算のGDPに占める割合を1とした場合、米国は22、韓国は3.6、台湾は3.1である。米国の予算が思ったより少なく思えるかもしれないが、米国には世界最強、最大規模の海軍がある。その海軍に守られていてさえ、沿岸警備に日本よりはるかに多くの予算を、米国は割いているのだ。
EEZ10万平方キロあたりの船艇数は、日本を1とした場合、米国2.4、韓国5.8、台湾3.2である。EEZ10万平方キロあたりの航空機の数は、日本1、米国1.6、韓国2.1だ。海岸線1キロあたりの隊員数は、日本1、米国6.6、韓国13.7、台湾26.7である。
海保の予算、船、航空機、人員、すべてが不足なのだ。だが、自衛隊と海保の役割分担の異常さも見なければ、海保を取り巻く状況の真の厳しさは見えてこない。
戦後日本ではずっと、自衛隊を雁字搦めに縛りつける政策が続き、本来海自が果たすべき役割であっても海自は遠ざけられ、代わりに海保が駆り出されてきた。結果として海保にとっては恒常的に過剰負担の状況が続いている。
「道路局」には6兆円
たとえば領海警備だ。他国ならば平時から海軍が領海を警備する。日本は海自を封印し、海上で犯罪が発生した場合に、海保が出動する。尖閣諸島周辺の領海に常駐するのも海保の船だ。同海域には時として中国海軍の軍艦が遊弋する。中国の軍艦に睨みを利かせ得るのは海自であって海保ではない。ソマリア沖の海賊退治にも当初、海保の派遣が検討された。国際社会では、犯罪集団としての海賊への対応は海軍の出動が大前提だ。
日本ではこうしたことのおよそすべてに、まず、海保が出される。にも拘らず、海保の予算、装備、人員は、先に見たように、著しく貧弱だ。
たしかに海保は、現在、老朽船を順次新型に替え、情報通信システム等の整備も進めつつある。だが、その整備の速度も規模も、日本周辺海域の緊迫度に較べれば遅々たるものだ。新型への更新の緊急整備予算は少なくとも3,800億円が必要だと見積もられているのに対し、手当されているのは2,000億円だ。
航空母艦の建造を発表し、海軍大国への道を明確に歩み始めた中国は、尖閣領有権を主張して止まず、その主張を尚、強めつつある。日本は外交交渉の柱としても、海保と海自双方の力を急ぎ整備しなければならない。にも拘らず、なぜ、海保の困窮状態は改善されないのか。
海保を所管する国土交通省の考え違いもその一因ではないか。海保の年間予算は1,858億円。船が腐食し、緊急整備予算も十分に手当してもらえないとき、同じ国交省の道路局には、毎年特別会計から6兆円余りもの資金が流れ込む。海保の船や航空機の老朽化にまともに向き合わず、領土領海の侵犯に目をつぶり、道路局ひとり甘い権益を貪り続けているわけだ。国家政策の重要性と優先度についての判断が出来ていないのである。日本国全体として海保と海自の役割分担など取り組むべき課題は多いが、国交省自身、自分の足下から国益に基づいて政策と予算配分を改善していく必要がある。
バラク・フセイン・オバマ大統領(31)
5.四つ目のポイント
四つ目の原則は、「イデオロギーや好き嫌いの感情を、外交政策に持ち込んではならない」と言うものである。
日本の親米保守には、「アメリカは好きだから、…
トラックバック by 世の中、まちがってる、根拠なき反日キャンペーン。 — 2009年03月06日 17:05
北朝鮮の日本攻撃は一旦、白紙に
テポドンを発射すると騒がしい北朝鮮だが、
実は人工衛星だと発表。
この人口衛星をテポドンだと認識し、
日本が迎撃すれば、日本の先制攻撃となり、
北朝鮮が日本に攻撃開始するか…
トラックバック by 格差社会対策室・年収を増やす千の知恵 — 2009年03月06日 23:10
尖閣諸島問題(129)…
そして中国の対日工作については、小生のブログ2007年5月6日の「米民主党を手玉…
トラックバック by Chinkoro中国の反日政策 — 2009年09月16日 02:55